「日本の「がん・生殖医療」発展のために」

がん治療と妊娠~がん治療後の将来を見据えて~

サイトマップ

特定非営利活動法人日本がん・生殖医療学会

設立の趣旨

 近年、がんに対する集学的治療の進歩によって、多くの患者が「がん」という病気を乗り切ることができるようになってきた。 しかし、若年患者に対するがん医療は、性腺機能不全、妊孕性の消失そして早発閉経などを引き起こすこととなる。妊孕性温存とは、若年のがんや免疫疾患患者などに対する治療によって将来妊娠の可能性が消失しないように生殖機能を温存する考え方である。 1978 年に世界初の体外受精児が出生してから30数年が経過し、本邦でも約 60人に1人が体外受精(顕微授精、凍結胚移植を含む)により出生する時代となっている。顕微授精によって少数の配偶子から妊娠・出産が可能となり、さらに凍結保存技術の進歩に伴って、妊孕性温存の一つに受精卵の凍結保存という選択肢が増えることとなった。 現在、若年がん患者における治療寛解後の妊孕能温存法として、未受精卵(卵子)凍結、胚(受精卵)凍結、精子凍結、卵巣遮蔽や卵巣位置移動術そして卵巣凍結などがあげられる。特に女性がん患者は、生殖細胞(未熟あるいは成熟した卵子)または卵巣組織を外科的に採取しなければならず、月経周期によってはそのタイミングがベストとはならないこともあることから、がんの診断後可能な限り早急にがん治療開始前に妊孕性温存の可能性を検討しなければならない。
若年がん患者が妊孕性を温存した治療を選択する機会が増加しつつあることから、治療寛解後の男性としてのあるいは女性としてのQOL向上を志向して、症例によっては治療開始前から妊孕性温存に対する十分な対策を練る必要性がある。しかし、なによりも妊孕性温存希望のがん患者においては、原疾患の治療が最優先されるべきであり、その治療を遅滞なく遂行することを大原則とし、がん・生殖医療は原疾患の治療を担当する医師によって妊孕性温存を考慮することが可能であると判断された場合においてのみ施行される治療となる。
がんと診断された患者は、同時に多発する問題の自己解決が求められ、短期間にいくつもの選択を余儀なくされることから、妊孕性温存が選択された場合には、がん治療専門医と生殖医療専門医両者がともにいることは患者にとっても大きなメリットになるものと考えられる。患者は生殖医療施行中にも常に原疾患の再発・再燃のリスクを負っていて、限られた時間の中での生殖医療の施行が求められる。原疾患が診断され後療法が始まるまでの間、妊孕性温存治療に与えられた期間は長くても1ヶ月以内であることが多い。
体外受精・胚凍結を行えたとしても1クールぐらいが限度であり、一生分の妊孕能温存としては決して満足な治療とはならない現状がある。原疾患が寛解し不妊治療を開始できたとしてもがん治療専門医による精密検査は定期的に必ず行われるべきであり、妊孕性温存が不可能となるがんの進展がみられた際には原疾患の治療を優先させることを忘れてはならない。

 一方本邦において、これまで若年がん患者に対する妊孕性温存療法の適応や治療法の選択などに関する議論が、生殖医療に携わる産婦人科医とがん治療に携わる腫瘍専門医や自己免疫疾患治療に携わる内科医の間で公式の場で検討されることはなかった。海外では2006年にドイツでFertiPROTEKTが、また2007年にはアメリカでOncofertility Consortiumなどのネットワークが構築され、国民に基礎的な知識を啓発し、治療を受けることができるネットワークシステムが構築されている。

 以上より、若年がん患者に対する「がん・生殖医療」の普及と教育を志向して、特に本邦の若年がん患者のみならず専門の医師に提供できる仕組みを作ることで我が国の医療に貢献したいと考え、特定非営利活動法人日本がん・生殖医療研究会を立ち上げることと致しました。本法人では、若年がん患者に対する妊孕性温存療法のエビデンスを構築するためのネットワークを立案することによって、より効果的な治療法の開発ならびに普及を目指して参ります。

平成 24年 11月 3日

法人の名称 特定非営利活動法人 日本がん・生殖医療研究会
設立代表者   鈴木 直

事務局問い合わせ

JSFP運営事務局

〒226-0003 神奈川県横浜市緑区鴨居6丁目19-20
株式会社ヒューマン リプロ・K内
MAIL: info@j-sfp.org
※メールまたは郵便にてお問い合わせ下さい。

特定非営利活動法人
日本・がん生殖医療学会