厚生労働科学研究がん対策推進総合研究事業 若年乳がん患者のサイバーシップ向上を志向した妊よう性温存に関する心理支援体制の構築
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心理社会支援

心理社会的ケアとは

最近10年は、患者さんを中心と考え、医療者が多職種連携して診療にあたるという考え=患者さん中心主義(Patient-centered care)へ変革してきました。そうした流れに沿って、生殖医療、がん医療においても全医療者が患者さんの心理面に配慮したケア=患者さんの心理面についてのコミュニケーション=心理社会的ケア(psychosocial care)を提供するべきだという考えが各種ガイドラインに盛り込まれるようになってきました。

心理社会的ケアとは、患者さんの心理・情動に関するコミュニケーション、心理社会面の医療情報の提供を意味します。


例えば

  • 治療にストレスが伴うことを伝えたり、ストレス対処の例を紹介したりします。
  • 費用や金銭的補助の情報を紹介したり、ソーシャルサポートの資源を紹介したりします。
  • 治療がうまくいかないなどで患者さんが泣いたときに、一般的な思いやりのある配慮をした対応をします。
  • 上記3点などについて、より詳細に相談できる場所や担当者を紹介します。

どのようなことができるかについては、施設や担当者の職種や業務、施設で受診する患者さんの状況によってバラエティがあります。



“心理社会的ケア”と従来からある“カウンセリング”、“相談”の違い

まず、医療専門職が医療情報の提供を中心とした“カウンセリング”、“相談”と“心理カウンセリング”は異なります。海外のガイドライン(例えば、がんのNICEガイドライン、生殖のESHRE Psychosocial care ガイドライン)に照らし合わせると、前者は心理社会的ケアの1つとみなされ、後者は心理カウンセリングと位置づけられます。
 心理カウンセリングとは、心理専門職による心理学的スキルを用いたものを意味します。


例えば

  • 患者さんの心理状態について、心理技術を用いてアセスメントします。アンケートのような紙に記入してもらう方法、専用の用具を操作してもらう方法、絵を描いてもらう方法、対話による方法などさまざま方法を用います。
  • 患者さんの心理サポート、治療がうまくいかない時や取り乱した時など危機的状況に対する心理介入をします。
  • 患者さんと夫婦や家族との人間関係やコミュニケーションの問題を担当します。
  • グリーフケアを担当します。
  • 精神症状のある患者さんの心理療法を担当します。

以上が心理カウンセリングの範疇ですが、具体的にどのようなことができるかについては、施設や担当者の業務や教育・実績、施設で受診する患者さんの状況によってバラエティがあります。



心理社会的ケアと心理カウンセリングは、
多職種連携、多施設連携により有機的に機能します。

例えば、カナダの医療経済研究で、心理社会的ケアと多職種・多施設などの医療連携が普及すると、カナダの医療費の3分の1を削減できるという報告があります(Stewart,2000)。

多職種連携には、

  • 各医療職が専門的に独立した存在として、必要に応じて患者さんを紹介したり情報共有したりする体制(multidisciplinary team approach)
  • 他の医療職とのコミュニケーションに重点が置かれ、多職種によって協働でアセスメント、ケアプラン作成、ケアの提供が行われる体制( interdisciplinary team approach)
  • 上記2点目の多職種による協働に加えて、一部の役割を共有して実施することも含む体制 (transdisciplinary team approach)

の3つのチームアプローチがあります(菊地,1999)。施設や患者さんの状況によって、どのアプローチが有意義であるかは異なります。

がん・生殖医療では、全医療者による心理社会的ケア、臨床心理士・心理専門職による心理カウンセリング、そして多職種・多施設の医療連携を充実させていくことが患者さんにとっても医療者にとっても最善となるでしょう。  


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