研究への取り組み

はじめに

 近年医療の目覚ましい進歩に伴い小児がん患者さんの生命予後が改善し、小児がん経験者(Childhood Cancer Survivors:CCS)のかたが増加しています。がんの治療をうけた子どもさんは、治療終了後に晩期合併症を発症する場合がありますので、長期フォローアップを続けることが大切です。小児期にうけたがんの治療による晩期合併症の一つである妊孕性(妊よう性)の低下(子宮・卵巣・精巣など生殖臓器の異常により将来子供を持つ事が困難になる事)は、がんを克服した患者さんの将来の生活の質(QOL=quality of life)の低下をもたらす可能性があり、重要な問題として注目されています。

小児がん治療後の性腺機能異常・妊孕性低下

 小児は思春期になると性腺(精巣・卵巣)から性ホルモン(男性ホルモン・女性ホルモン)が分泌されるようになり、おとなのからだへと成熟していきます。小児期にがんの治療を受けると、小児の性腺機能や妊孕性に異常がおこる可能性があります。性腺機能異常は障害された部位により、中枢性と原発性に分類されます。また、男児の場合女児の場合で異なります。
 小児がん治療後の患者さんの性腺機能や妊孕性に関する海外からの報告では、多数例での検討において治療内容・治療時の年齢などにより様々な程度に影響を受けることが示されています。また将来の妊娠・出産における問題も報告されています。一方、我が国では多施設での調査が行われていないため実態が把握されておらず、患者さん自身が認識しておられない場合もあります。
 がんの治療開始前の妊孕性温存治療(男性女性)について、海外では前向きに検討が行われるようになってきましたが、本邦の小児がん患者さんについてはまだこれからの課題です。

我々の取り組み

 がん患者さんにとって自らの社会生活に直結する性腺機能と妊孕性は重要であり、正しい医学的情報と適切な医療を提供するシステムづくりが不可欠です。そこで生殖医療ネットワーク構築を目指す我々は、小児・若年がん患者さんの性腺機能と妊孕性、妊娠・出産などに関する情報提供を目的として、このポータルサイトを開設いたしました。小児がん(定義分類予後など)への理解を深めていただくと同時に、他領域での取り組み(若年乳がん婦人科がん)の紹介、心のケアなど、皆様に役立つ情報を順次発信していく予定です。

事業名

サイト開設責任者
厚生労働科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業
「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班