妊娠・出産における問題点

妊娠・出産における問題点(女性)

 小児がんの治療をうけたことがある女性が妊娠した場合、受けた治療内容により妊娠への影響は異なります。

①腹部・骨盤への放射線治療をうけたことがある場合
 以下のような影響がみられることが報告されています。
・流産(妊娠22週未満に妊娠が終わること)・早産(妊娠22週から36週6日までの出産)の頻度が増加する。
・出生体重が2,500g未満の低出生体重児や、在胎週数に比して体重が軽い児の生まれる割合が増加する。
 このような影響は、放射線の線量が高いほど大きいとされ、子宮容量の減少、子宮筋の線維化による伸展障害、子宮血管障害、子宮内膜障害といった子宮障害が要因と考えられています。子宮への障害の程度は治療の年齢にも関連し、思春期前の子宮は成人より放射線に対して障害を受けやすく14-30グレイで子宮の機能障害に至ると示唆されています。 また放射線により、骨盤の発育が不十分で経腟分娩が困難になったり、腹腔内に癒着を生じて妊娠中の腸閉塞や帝王切開時の腸管損傷などのリスクになったりする可能性があります。

②頭部への放射線治療をうけたことがある場合
 流産の率がやや上昇するという報告と、流産・早産の率は変わらないという報告があり、影響は明らかでありません。死産・新生児死亡は増加しないと報告されています。

③抗がん剤のみによる治療をうけたことがある場合
 流産・早産や胎児発育への影響は認められません。ただし抗がん剤により心臓や腎臓といった臓器の機能が低下している場合は、妊娠の継続が困難になる可能性があり注意が必要です。

④手術治療をうけたことがある場合
 臓器の機能が保たれている場合は妊娠への直接的影響はほとんどありません。手術により腹腔内に癒着があるような場合は、妊娠中の腸閉塞や帝王切開時の腸管損傷などのリスクになる可能性があります。

 放射線や抗がん剤による治療を行ったことがある女性が出産した場合、その出生児に先天異常(いわゆる奇形や、染色体の変化による疾患)が多いということはありません。新生児における先天異常の頻度は一般的に約3〜5%とされており、小児がん治療後の女性から生まれた新生児においてもその頻度は同等とされています。
 以上から、妊娠への影響に関しては腹部・骨盤への放射線治療の有無およびその線量が特に重要です。ただし、受けた治療内容が同じでもその影響には個人差がありますので、個別にリスクを評価して妊娠管理を行うことが重要です。
(文責:関口 将軌、左合 治彦)

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