用語の説明

小児がん(しょうにがん)

 小児がんとは、小児期すなわち15歳以下の子どもに発生する悪性腫瘍と定義されます。成人のがんとは異なり、肉腫が多く、癌腫が少ない特徴があります。小児がん国際分類第3版 (ICCC-3)によると、小児がんは主分類として12種類に分けられます。頻度の多いものとして白血病、悪性リンパ腫などの血液腫瘍、脳腫瘍があり、神経芽腫、横紋筋肉腫が続きます。その他、腎芽腫、肝芽腫、網膜芽細胞腫、骨肉腫、胚細胞性腫瘍などがあります。
 小児がんに対する治療戦略は、化学療法(抗がん剤)による全身療法と、外科的治療(手術)・放射線療法による局所療法を組み合わせた集学的治療です。造血幹細胞移植(Hematopoietic Stem Cell Transplantation:HSCT)は、主に難治性白血病に同種HSCTとして、難治性固形腫瘍には大量化学療法後の骨髄救援を目的に自家HSCTが施行されます。

小児がん国際分類第3版 (ICCC-3)による主分類
(しょうにがんこくさいぶんるいだい3はん)

  1. 1. 白血病、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群
  2. 2. リンパ腫および網状内皮系腫瘍
  3. 3. 中枢神経系および他の頭蓋内・脊髄内腫瘍
  4. 4. 神経芽腫および他の末梢神経細胞腫瘍
  5. 5. 網膜芽腫
  6. 6. 腎腫瘍
  7. 7. 肝腫瘍
  8. 8. 悪性骨腫瘍
  9. 9. 軟部肉腫および他の骨外発生の肉腫
  10. 10. 胚細胞性腫瘍および他の性腺腫瘍
  11. 11. 上皮性腫瘍および黒色腫
  12. 12. その他および分類不能な上皮性癌

小児がんの疫学(しょうにがんのえきがく)

 小児がんの新規発症は本邦において年間2,000〜2,500人程度と考えられており、決して頻度の高い疾患ではありませんが、小児の病死死因の第1位を占めており、少子化が進む現在、「国として対応すべき疾患」のひとつといえます。本邦にはこれまで精度の高い小児がん登録システムが確立していなかったため、正確な疫学データがまだ十分に蓄積されていません。
 小児がんの発生動向として、成人では上皮性の癌腫が多いのに対し、小児では中胚葉や神経系の前駆細胞由来の肉腫や芽腫が多く、また急性白血病では成人とは逆に骨髄性よりもリンパ性のものが多くみられます。
 新規発症の小児がんの疾患別比率をみると、白血病・骨髄増殖性疾患・骨髄異形成症候群が最も多くみられます。これに次いで多いのは、第2位は中枢神経系・他の頭蓋内/脊髄内新生物、第3位はリンパ腫・細網内皮系腫瘍で、これら第1位から第3位のみで小児がん全体の約三分の二を占めています。第4位は胚細胞性腫瘍・絨毛性腫瘍・性腺の新生物、第5位は神経芽腫・他の末梢神経細胞腫瘍、の順となっています。
 主要疾患の性差をみると、急性白血病、悪性リンパ腫、神経芽腫、頭蓋内胚細胞性腫瘍は男児に多く、頭蓋外胚細胞性腫瘍は有意に女児に多くみられます。
 主要疾患の発症年齢別頻度をみると、急性白血病は3歳にピークがみられ、これはリンパ組織の活動と関連するとされています。固形腫瘍では乳幼児期に発症のピークがあり、成人に近づくにつれて減少するパターンのものが多いです。一般に、急性骨髄性白血病や胚細胞性腫瘍、横紋筋肉腫などは乳幼児期と小児期後期に2峰性の発症パターンをもち、骨肉腫やEwing肉腫などは学童後期から増加し、また甲状腺癌や悪性黒色腫など成人に多い腫瘍はAdolescent and Young Adult (AYA)世代以降に増加してくるなど、疾患によってピークを形成する時期が異なるため、小児がん全体としては2峰性をなすとされます 。
(文責:瀧本哲也)

小児がんの予後(しょうにがんのよご)

 小児がんの治療成績は医学の発展とともに進歩し、アメリカ国立がん研究所の統計(Cancer Statistics, 2013)によると、5年以上生存する確率は小児がん全体では83%で、疾患毎では急性リンパ性白血病91%、急性骨髄性白血病64%、非ホジキンリンパ腫85%、ホジキンリンパ腫97%、骨腫瘍79%、脳・脊髄腫瘍75%、神経芽腫74%、軟部腫瘍82%、ウィルムス腫瘍90%と報告され、日本でも同じ程度だと思われます。もちろん、病気が進行していないものは治りやすくて、進行しているものは治りにくく、同じ病気であっても治りやすいタイプと治りにくいタイプがあったりするのですが、抗がん剤がよく効くことから、例え転移があっても治ることが少なくありません。しかし、小児がんを治すためには、非常に強い抗がん剤治療や放射線治療、外科手術を病気の種類に合わせて組み合わせておこなう必要があります。そのため治療による様々な合併症が起こることが多く、中には長く続くことがあります。また、治る患者さんが多いということは、それらの長期間続く合併症の問題に適切に対処したり解決したりすることが非常に重要であるということになります。このような重要で長く続く合併症の一つとして不妊があります。そこで我々の研究班では、診療科を超えてこの問題に対する取り組みを始めました。
(文責:藤崎弘之)

晩期合併症(ばんきがっぺいしょう)

 晩期合併症(晩期障害:late effects)とは、原病による侵襲や、化学療法・外科的治療・放射線療法などの治療に起因する、直接的または間接的な障害をさします。抗がん剤や放射線照射への感受性は、患者さんの性別・年齢・臓器によって異なります。また、がんの種類、発症部位、治療法の種類や治療量により、さまざまな合併症がおこります。化学療法・外科的治療・放射線療法や移植を組み合わせた集学的治療が行われた場合は、複合的な障害となります。治療を受けた時期や医療機関により治療内容が異なる場合もありますので、患者さんごと個別に晩期合併症の危険性を予想する必要があります。
 晩期合併症には、内分泌・神経・消化器・腎尿路・呼吸器・心血管系などの内科的な異常以外にも、脊椎四肢・歯牙口腔・皮膚・耳鼻科・眼科など全身諸臓器の異常や、二次がん、精神・心理学的問題や教育・社会面の問題など、さまざまな種類があり、包括的なフォローが必要となります。晩期合併症は治療後年数を経てから発症する可能性がありますので、長期のフォローアップが重要です。
 小児期に治療をうけた患者さんの晩期合併症として、内分泌異常(ホルモンの異常)の頻度がとりわけ高いとされています。性腺機能低下症・妊孕性低下・早発閉経といった性腺および生殖機能に関する問題以外にも、成長障害(低身長)、下垂体機能低下症、甲状腺機能異常、副腎皮質機能異常、中枢性尿崩症、骨塩量低下、肥満・やせ、耐糖能異常などがあります。
 海外では多施設共同研究として多数の小児がん患者さんの治療後の晩期合併症に関するコホート研究がおこなわれています。コホート研究とは疫学研究の中でも特定の集団(コホート)を対象として長期的に経過を追跡する調査手法のことですが、代表的なものとして、北米のCCSS(Childhood Cancer Survivor study)があります。1970年から1986年に治療を受けた約1万4千人の小児がん経験者について、長期的な生命予後、二次がん、晩期合併症などの健康障害が、同胞と比べてどの程度生じているかを継続的に調査し報告しています。

長期フォローアップ(ちょうきふぉろーあっぷ)

 長期フォローアップとは、原疾患の治療がほぼ終了し、診療の重点が晩期合併症、後遺症や副作用対策が主になった時点からの対応をさします。原疾患や治療内容に基づき晩期合併症のリスクをある程度予測できることから、各国で長期フォローアップガイドが作成されており、米国のChildren’s Oncology Group(COG)のガイドラインが有名です。我が国では、日本小児内分泌学会CCS委員会により作成された 「小児がん経験者(CCS)のための内分泌フォローアップガイド」が、学会ホームページのガイドラインの項から自由にダウンロードできます。


■日本小児内分泌学会 学会ガイドライン
 小児がん経験者(CCS)のための医師向けフォローアップガイド

小児の性腺機能(しょうにのせいせんきのう)

 小児の性腺機能は、視床下部―下垂体―性腺系が互いに調節しあってホルモンバランスを保っています。視床下部から分泌されるゴナドトロピン分泌ホルモン(gonadotropin releasing hormone: GnRH、LH-RHともいう)により、下垂体からのゴナドトロピン分泌が促進されます。ゴナドトロピンには、黄体形成ホルモン(luteinizing hormone: LH)と卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone: FSH)があり、これらの刺激により性腺(精巣、卵巣)から性ホルモン(男性ホルモン、女性ホルモン)が分泌されます。性腺機能異常のスクリーニング検査として、下垂体からのゴナドトロピン(LH, FSH)と性腺からの性ホルモン(男児ではテストステロン、女児ではエストラジオール)を同時に測定して評価します。

性腺機能異常(せいせんきのういじょう)

 性腺機能異常は、その原因部位により、中枢性 (視床下部・下垂体の異常による)と原発性(性腺の異常による)、に大別されます。中枢性性腺機能低下症では、視床下部・下垂体周辺腫瘍や頭蓋照射(30Gy 以上)により中枢が障害されることにより、性腺刺激ホルモンの分泌異常がおこります。原発性性腺機能低下症では、抗がん剤や性腺への放射線照射により、性腺(精巣・卵巣)自体が障害されます。

・男児の場合
男児の精巣は、抗がん剤(アルキル化剤など)や放射線照射により障害されます。精巣を構成する細胞において、男性ホルモンを産生する細胞(Leydig細胞)は比較的がんの治療に抵抗性ですが、精子をつくる細胞(胚細胞)とその支持細胞(Sertoli細胞)は障害を受けやすいという特徴があります。二次性徴(男らしい体つきや声変わりなど)がみられても、妊孕性は障害されている場合があります。精巣容積の低下、血液検査でゴナドトロピン高値(特にFSH高値)と男性ホルモン低値、精液検査で精子数減少を認めます。

・女児の場合
女児の卵巣は、抗がん剤(アルキル化剤など)や腹部・骨盤への放射線照射により障害されます。原始卵胞数と女性ホルモン産生能が同時に低下するため、二次性徴の遅延や停止、月経の異常(無月経)、妊孕性の低下がおこります。血液検査でゴナドトロピン高値と女性ホルモン低値を認めます。

関連リンク

■国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」
がんの冊子:小児がんシリーズ(http://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/child.html)

■国立がん研究センターがん対策情報センター「小児がん情報サービス」
小児がんの解説(http://ganjoho.jp/child/cancer/index.html)
検査・診断・治療(http://ganjoho.jp/child/dia_tre/index.html)
長期フォローアップと晩期合併症(http://ganjoho.jp/child/follow_up/aftercare/aftercare02.html)

■CureSearch
CureSearch(http://curesearch.org/)
「CureSearch」は、2003年に米国小児がん研究グループ(Children’s Oncology Group、略称:COG)と、同学会の臨床研究を支援する財団「National Childhood Cancer Foundation (NCCF)」が共同で設立した、世界で最も大きな小児がんの支援団体です。「CureSearchWeb」は、その情報発信サイト(ホームページ)で、小児がん治療後の晩期合併症(生殖機能の問題など)についても解説しています。
小児がん治療後の女性の健康上(生殖機能)の問題
(http://curesearch.org/Female-Reproductive-Issues-Summary)

小児がん治療後の男性の健康上(生殖機能)の問題
(http://curesearch.org/Male-Reproductive-Issues-Summary)

■ CureSearchWeb日本版
 
米国CureSearch ウェブサイトの情報を、特定非営利活動法人サクセスこども総合基金(SUCCESS)がライセンスを受け、日本の小児がんの患者さんやご家族・ご友人の皆様に役立てていただくために、日本語に翻訳されたものです。